2022/04/08 ナポレオン戦争期ドイツ・プロイセン史に興味がある方に書籍紹介したい②

 ワイ19世紀ドイツ・プロイセン史オタク、ナポレオン戦争期のドイツに注目してくれているオタクに殆ど会ったことがないこと、クラウゼヴィッツの名前出したら『戦争論』についての議論ばっかりになっちゃうことに辟易してきたので、ナポレオン戦争期のドイツ・プロイセンについて布教するべく、関連書籍を紹介したいと思います。

 今回はその時代の人物に関する書籍を紹介したい。

凡例

  • 〝ナポレオン戦争期ドイツ・プロイセン史〟は、プロイセン王国がフランス革命戦争〜ナポレオン戦争に関わった期間を1791年8月の「ピルニッツ宣言」から1815年年のウィーン会議終了と定義する。
  • 本稿はその期間中のプロイセン王国を中心としたドイツ史を知るために、わたしが拝読し、興味深いと感じた書籍を独断と偏見で紹介するものである。
  • 出版・流通の状況は考慮しない。現在入手困難な書籍も含まれるので、ご了承頂きたい。 大都市や都道府県立の図書館には置いてある可能性が高いので、興味を持たれたら是非探して欲しい。
  • 「タイトルは知っているが、一切読んだことの無い書籍」は除外する。 もしかしたら、ここに列挙した他にも関連する書籍があるだろうとは重々承知の上だが、しっかり紹介できそうに無いので、ここでの紹介は控えさせて頂く。
  • 本稿で紹介する書籍には「一部しか拾い読みしていない書籍」を含むものとする。 一部というのは、1編分以上、1章分以上ということである。紹介する書籍は全体で〝ナポレオン戦争期ドイツ・プロイセン史〟を扱ったものは少ないが、一部でそれが説明されており、それだけでも充分興味深い内容である。
  • なお、この文章を書いているわたしは、高等教育で歴史を専攻していない、〝ナポレオン戦争期ドイツ・プロイセン史〟に興味があるだけの残念なオタクである。 というか、今現在、大学すら卒業していない。残念にも程がある。

その時代の人物に関する書籍

ピーター・パレット『クラウゼヴィッツ―「戦争論」の誕生』中公文庫

  • 白須英子:訳

 クラウゼヴィッツの生涯を紹介した名著。

 家系の由来から経歴、どのような教育や思想の影響を受け、どんな人々と関係し、世界を広げ、未完の名著と呼ばれる『戦争論』の執筆に至ったのかが紹介されている。クラウゼヴィッツと交流した人々のことも詳しく紹介されており、特にゲルハルト・フォン・シャルンホルストについては、日本語文献の中でも随一の情報量を持つ。

 誤訳や発音の間違いも多少見受けられるが、それを差し引いてもクラウゼヴィッツ関連では必読の書と言えるだろう。

 ちなみに原著は『Clausewitz and the State』。Kindleでも読めるようだ。

ピーター・パレット『クラウゼヴィッツ―「戦争論」の誕生』

『クラウゼヴィッツと「戦争論」』彩流社

 その名の通り、クラウゼヴィッツとその著書『戦争論』を巡る論考が集められている。

 まずクラウゼヴィッツがどのような人物かが紹介されており、その成り立ちを見る上でナポレオン戦争期ドイツ・プロイセン史の振り返りもされているので、復習するにもおすすめ。

 また、『戦争論』に焦点が当たっているので、現在に於ける『戦争論』の立ち位置や解釈、現代の軍事にどのように応用されているかが、国内外の学者諸氏によって論じられているので、理解を深める上でも興味深い内容になっている。

『クラウゼヴィッツと「戦争論」』彩流社

西村貞二『フンボルト(Century Books―人と思想)』清水書院

 プロイセンで外交官、閣僚、教育長官を務めた人物、ヴィルヘルム・フォン・フンボルトの伝記。

 若い頃からかのゲーテやシラーと親交を持ち、新古典主義者として活躍、プロイセン改革の一環としてベルリン大学を設立、その後も外交や政治の場で活躍した彼の業績が分かりやすく説明されている。

 新書判で読みやすいのでおすすめ。

西村貞二『フンボルト(Century Books―人と思想)』清水書院

亀山健吉『言葉と世界―ヴィルヘルム・フォン・フンボルト研究』法政大学出版局

 こちらにはヴィルヘルム・フォン・フンボルトの老後のライフワークである、言語学分野での業績をメインに紹介されている。

 外交官・政治家時代の活動はもちろん、ヤーコプ・グリムとの交流や、興味深いところでは彼の日本語研究についての言及もある。

亀山健吉『言葉と世界―ヴィルヘルム・フォン・フンボルト研究』法政大学出版局

ヘンリー・キッシンジャー『回復された世界平和』原書房

  • 伊藤幸雄:訳

 オーストリアの外交官・メッテルニヒが、ナポレオン戦争をはじめ、それ以降の外交の場でどのように活躍したかが紹介されている。

 プロイセン関係ないじゃん、と思うなかれ、彼の選択によって当時からプロイセンは少なからず影響を受けていたため、どっちにしろメッテルニヒの行動を追うことになるのだ……!(震え)

 ナポレオンとの丁々発止の遣り取り、戦争後のウィーン体制維持のための各国首脳との取引で、彼がどのように考え、行動したかを見ていると、手に汗握るとともに、メッテルニヒの偉大さをヒシヒシと感じることが出来る。なんだこれ、こんなん勝てるわけないだろ、の気分になる。

ヘンリー・キッシンジャー『回復された世界平和』原書房

ルドルフ・K・ゴルトシュミット=イェントナー『七つの歴史的対決」白水社

  • 金森誠也:訳

 こちらの本ではメッテルニヒとナポレオンの政治・外交的対決に焦点が当てられている。

 上述の本は分厚くて小難しいことが残念ながら否めないので、こちらの本から始めて頂くのも手だと考える。こちらの本だけでも充分になんだこれ、こんなん勝てるわけないだろ、の気分になる。

ルドルフ・K・ゴルトシュミット=イェントナー『七つの歴史的対決」白水社

『世界の建築家 解剖図鑑』エクスナレッジ

 19世紀ドイツ・プロイセン最大の建築家であるカール・フリードリヒ・シンケルについてのまとまった紹介が掲載されている本が、日本語ではこれしか見つかりませんでした!!!!(懺悔)

 19世紀ドイツ・プロイセンの歴史を辿って行けば、いい確率で出逢う建築家。彫刻家でもあり、舞台芸術家でもある。プロイセン改革の真っ只中では、刷新されるプロイセンのイメージを形作る芸術家が望まれ、シンケルが建設分野のリーダーとして活躍したのだ。代表作はアルテス・ムゼウムやノイエ・ヴァッヘなど。

 美術出版社から出ている『増補新装 カラー版 西洋美術史』や『増補新装 カラー版西洋建築様式史』にもその名前は登場するので、彼の存在感は推して知るべし。

 シンケルの日本語伝記が出たらご教授ください!!!!(涙)

『世界の建築家 解剖図鑑』エクスナレッジ

Vanya Eftimova Bellinger『Marie von Clausewitz: The Woman Behind the Making of On War』

  • 未邦訳

 カール・フォン・クラウゼヴィッツの奥方、マリー・フォン・クラウゼヴィッツ夫人(ブリュール伯女)の伝記。

 元ザクセン首相を務めた祖父を始め、出身家であるブリュール家の成り立ちから、家族構成、受けた教育とその方針、クラウゼヴィッツとの出会いから結婚を経て、夫の『戦争論』に参加するまでが紹介されている。何と日本語に翻訳されていない!

 個人的見解だが、『戦争論』は夫のスキル向上から執筆そのものに至るまで、成り立ち全てにマリー夫人が関わっていると言って良く、即ちクラウゼヴィッツへの理解を深めるためには彼女への理解もまた必須だと考えている。しかし、わたしの知る限りマリー夫人の伝記はこれしか無いのだ!

 この本は「It is one of history’s great ironies that the West’s seminal treatise on war–an activity traditionally inseparable from constructions of masculinity–was edited and published by a woman.」という出だしから始まるが、彼女への研究が進んでいないことも、それを如実に示していると思う。

 皆でこの本を読んで、マリー夫人研究の機運を高めて行きたい。

Vanya Eftimova Bellinger『Marie von Clausewitz: The Woman Behind the Making of On War』

次回予告

 次回は上述した人々が著述した書籍や、WEB上で読むことが出来る資料などを紹介したいと思います。

 また、紹介した書籍は出版時期的にも古いものが多いことが否めません。もし新しい論考などが発表されているようでしたら、随時更新していくつもりですので、よろしくお願いします。情報などありましたら、Twitterなどに送って頂けたら幸いです。

 楽しく歴史オタクが出来る仲間が見つかりますように!

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