ワイ19世紀ドイツ・プロイセン史オタク、ナポレオン戦争期のドイツに注目してくれているオタクに殆ど会ったことがないこと、クラウゼヴィッツの名前出したら『戦争論』についての議論ばっかりになっちゃうことに辟易してきたので、ナポレオン戦争期のドイツ・プロイセンについて布教するべく、関連書籍を紹介したいと思います。
今回はナポレオン戦争期ドイツ・プロイセン及び人物が登場する書籍、また番外編として「タイトルは知っているが、一切読んだことの無い、或いは拾い読み程度しか出来ていない書籍」などを紹介したい。
凡例
- 〝ナポレオン戦争期ドイツ・プロイセン史〟は、プロイセン王国がフランス革命戦争〜ナポレオン戦争に関わった期間を1791年8月の「ピルニッツ宣言」から1815年年のウィーン会議終了と定義する。
- 本稿はその期間中のプロイセン王国を中心としたドイツ史を知るために、わたしが拝読し、興味深いと感じた書籍を独断と偏見で紹介するものである。
- 出版・流通の状況は考慮しない。現在入手困難な書籍も含まれるので、ご了承頂きたい。 大都市や都道府県立の図書館には置いてある可能性が高いので、興味を持たれたら是非探して欲しい。
- 「タイトルは知っているが、一切読んだことの無い書籍」は除外する。 もしかしたら、ここに列挙した他にも関連する書籍があるだろうとは重々承知の上だが、しっかり紹介できそうに無いので、ここでの紹介は控えさせて頂く。
- 本稿で紹介する書籍には「一部しか拾い読みしていない書籍」を含むものとする。 一部というのは、1編分以上、1章分以上ということである。紹介する書籍は全体で〝ナポレオン戦争期ドイツ・プロイセン史〟を扱ったものは少ないが、一部でそれが説明されており、それだけでも充分興味深い内容である。
- なお、この文章を書いているわたしは、高等教育で歴史を専攻していない、〝ナポレオン戦争期ドイツ・プロイセン史〟に興味があるだけの残念なオタクである。 というか、今現在、大学すら卒業していない。残念にも程がある。
ナポレオン戦争期ドイツ・プロイセン及び人物が登場する書籍
萩原朔太郎『宿命』より『パノラマ館にて』
門外漢なので、詩が書かれた背後関係を存じ上げないのだが、著者が劇場で映画を観ている様子が表現されているのだと思う。その中でワーテルローの戦いの様子が登場し、ブリュッヒャー将軍が登場する。
詳しい経緯が知りたいので、ご存知の方は是非教えて欲しい。
横光利一『ナポレオンと田虫』
ナポレオンが主人公である。
ただ
余は、余は、何物をも恐れはせぬぞ。余はアルプスを征服した。余はプロシャを撃ち破った。余はオーストリアを蹂躙した。
という台詞や文が登場するので紹介する。
赤城毅『薔薇とサーベル―ナポレオン戦争秘史』朝日ノベルス
〝プロイセン王国軍に並ぶものなき剣の名手、第八軽騎兵連隊大尉エドゥアルト・フォン・リスマイヤー〟を主人公とする、ワーテルローの戦いを控えた欧州を舞台としたSwashbuckler(西洋チャンバラ)小説だ。戦場での武勲よりも、特命を受けての一騎駆けで知られるリスマイヤー大尉が、欧州を股に掛けて活躍、渦巻く陰謀の闇から光を導き出す内容である。
リスマイヤー大尉に任務を与えているのが、グナイゼナウ将軍なのだ。彼らを見守るポジションとして、ブリュッヒャー元帥も登場する。
個人的に、主人公のリスマイヤー大尉もさることながら、グナイゼナウも格好良く描写されているのが大好きだ!
グナイゼナウの眼に、ブランデンブルク地方の湖沼の水面に似た、深い光が宿った。
という一文は特に素晴らしい。彼の智将たる一面を一言で示した表現ではないだろうか。わたしがグナイゼナウを思い浮かべる時は、絶対にこの一文を思い浮かべている。
あとがきには
できることなら、ナポレオンのロシア遠征や半島戦争といった、別の舞台を用意してやって、ホーンブロワー提督やジェラール准将とすれちがわせるといったイタズラもしてみたいものです。
という文、プロイセンの軍事改革を前提にしてこの話を書かれたことなどが書かれているのだが、続編はないのだろうか。この作品が大好きなので、著者の方がお手すきになった暁には、是非拝読したいものである。
タイトルは知っているが、一切読んだことの無い、或いは拾い読み程度しか出来ていない書籍
ここでは、『凡例の「タイトルは知っているが、一切読んだことの無い書籍」は除外する。」条件に反するけれども購入したまま積読になっている書籍』を列挙します。 とは言えしっかり紹介できそうに無いことに変わりはないので、購入した理由を書くに留める。
将来的に必ず読破することを誓うものである!!
トーマス・ニッパーダイ『ドイツ史 1800-1866 上』白水社
- 大内宏一:訳
風に聞く名著だったので買いました。
ドイツ史関連の書籍を読んでいるとたまに登場する本として知っていた。19世紀を理解する上では絶対に役に立つと思っていたが、まさか拝読出来る日が来るとは……!!
見たところ、軍事に説明が偏りがちなプロイセン改革について、他の分野についても詳しく紹介されている様子。また政治の動きの他、思想や文化面にも文面が割かれているのが嬉しいところ。
頑張って読みたい!!
ダグラス・ボッティング『フンボルト―地球学の開祖』東洋書林
- 西川治・前田伸人:訳
フンボルトはフンボルトでもアレクサンダー・フォン・フンボルト、ナポレオンの次に有名と言われる人物の伝記! ②でも登場した、ヴィルヘルム・フォン・フンボルトの情報を追うため、弟であるアレクサンダーから見たヴィルヘルムの人間像が知りたいと思い、買った。
今のところ、関心のあるところしか拾い読み出来ていない。しかしアレクサンダーの描いた植物画などの挿絵が多く、読んでいて楽しい。博物学者として数々の冒険に繰り出しており、幅広い人脈を持ち様々な分野の要人と交流があるので、兄・ヴィルヘルムの情報目当てで読んだものの他の人物の話も知ることが出来て大変助かっている。もちろん弟視点からのヴィルヘルム・フォン・フンボルトの性格も知ることが出来、微笑ましい様子にニコニコしている。
アンドレア・ウルフ『フンボルトの冒険 自然という〈生命の網〉の発明』NHK出版
- 鍛原多惠子:訳
こちらもアレクサンダー・フォン・フンボルトの伝記。
本当に全然読めていない。プロイセン関連の箇所を探してプロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世の特技を知ったくらいしか活用出来てない、申し訳ない……!!
ただ上記の本より新しいので、新しい時代感覚の紹介が読めると信じている……!!
星野慎一『ゲーテ(Century Books―人と思想)』清水書院
フンボルト兄弟の友人であり、ヴァイマルの政治家であり、学者であり、大文豪として、どのように19世紀を生きていたのかを知りたかったので買った。
日本文学・思想への影響についても詳しく書かれているようだ。読むのが楽しみ。
内藤克彦『シラー(Century Books―人と思想)』清水書院
ヴィルヘルム・フォン・フンボルトとゲーテの親友であり、大文豪であり、かの第九の歌詞の元となった詩を書いた人物として、どのように19世紀を生きていたのかを知りたかったので買った。
よくゲーテと比肩して語られるが、彼の来歴については殆ど知らなかったので、お手頃な伝記として本書を知れて良かった。読むのが楽しみ。
藤田俊之『ベートーヴェンが読んだ本』幻冬舎
普通に19世紀人がどのような本を読んでいたのか知りたくて、1例として買った。
というのも、②で紹介しました、Vanya Eftimova Bellinger『Marie von Clausewitz: The Woman Behind the Making of On War』にて、
“Do you still remember, my dear Carl, that by our first conversations you expressed your enthusiastic admiration of Werther?” Marie wrote in 1807.
というように、マリー・フォン・ブリュール伯女が交際相手であるクラウゼヴィッツに、自分が何を読んでいるかを書き送ったりしている。ここではゲーテの『若きヴェルターの悩み』について言及しているが、他にもシラー『オルレアンの少女』『群盗』、アダム・ミュラーの講義が文中に登場しており、「19世紀人のことをより良く知るには、当時のひとの間で何が流行っていたかを知らねば……」 と考えた。
この本は本屋の音楽評論コーナーで見掛けたのだが、ちょうどベートーヴェン生誕250年の関連で出版されていたようだ。
ありがとう、ベートーヴェン。貴方が19世紀人で生誕250年で本当に助かった。
大原まゆみ『ドイツの国民記念碑 1813年-1913年』東信堂
- 中森義宗・永井信一・小林忠・青柳正規:監修
②でも登場した、カール・フリードリヒ・シンケルが制作したもののひとつに、クロイツベルク記念碑がある。本書にはそれが紹介されており、シンケルの作品についての解説が読みたくて買った。
久保哲司『ドイツ文学における哀しみの女たち』NHK出版
ゲーテやシラーの作品についての評論はもちろんなのだが、②でも紹介したヴィルヘルム・フォン・フンボルトの『国家活動の限界』からの抜粋が紹介されており、彼らの思想においてのつながりを確信したので……
Charles Edward White『Scharnhorst: The Formative Years, 1755-1801』Helion & Co Ltd
- 未邦訳
待ちに待った英語で読めるゲルハルト・フォン・シャルンホルストの伝記! しかもプロイセン任官以前!!
シャルンホルストの来歴についての詳細な解説は、わたしの知るところではピーター・パレット『クラウゼヴィッツ―「戦争論」の誕生』で触れられている程度しか見掛けたことが無かったので、この本の存在を知れたのは大変な幸運だった。しかもプロイセンに来る以前、ハノーファー時代に焦点が当てられている珍しいもの。
頑張って読みたいと思う!!
おわりに
繰り返し申し上げたいが、この文章を書いているわたしは、高等教育で歴史を専攻していない、〝ナポレオン戦争期ドイツ・プロイセン史〟に興味があるだけの残念なオタクである。 決して専門的な知識を以って、このような文章を書いているわけではない。書籍への不理解も間違いなくあると思う。その場合の文責は勿論わたしにある。申し訳ありません。問題があったらこの一連の記事は消します。
しかし、この文章を書いたのは、〝ナポレオン戦争期ドイツ・プロイセン史〟に興味を持った方々が、どのような書籍を読めばいいか、またこれから興味を持つ方が何から読めばいいか、それらに迷った時の一助となることを願ってのことだ。わたしの駄文なんか読む必要が無いのが一番だと思う。
これを機会に、是非図書館に行って本を探して欲しい。その時、もし迷ったら、ここに挙げた本を読んで頂けたら幸いである。
そして『薔薇とサーベル―ナポレオン戦争秘史』の続きとか、『Marie von Clausewitz: The Woman Behind the Making of On War』や『Scharnhorst: The Formative Years, 1755-1801』の翻訳が出ることを祈ってやまない。
